スロー・イングリッシュ?

焦って英語の上達を図ろうとするより、「じっくり」英語の実力を付けたい。そう思って、日本の大学を卒業した後、合計8年間イギリスに留学したのが、私の20代および30代前半でした。8年間の簡単な内訳は以下の通り。

(1)ホームステイ形式の語学学校:8ヶ月間

(2)英語集中講義(ディプロマコース):1年間

(3)大学院(応用言語学):約6年間

8年間を時間に換算すると、70,080時間となります。人間、24時間起きているわけはないので、仮に12時間英語で何かをしていたと仮定しましょう。そうすると、私のイギリス滞在時における「英語イマージョン時間」は、35,040時間となります。

ピッツバーグ大学の白石恭弘教授(「外国語に成功する人、しない人」 p24)によると、アメリカ人の学習者が日本語の上級レベルに達するのに、週30時間の集中レッスンで44週かかるそうです。この逆を日本人の英語学習者に当てはめるのには、少々疑問も残るかもしれませんが、当てはめてみましょう。

そうすると、日本人の英語学習者が、英語の上級レベルに到達するのに、同じ時間数(1320時間=44週×30時間)かかると予測できます。月曜日から土曜日まで、1日5時間のレッスンを受けるのは、かなりきついと思いますが、それくらいの覚悟で外国語を徹底的に学習すれば、1年間で上級レベルに到達することも不可能でないということを示唆しているような気がします。

話は突然変わりますが、イギリス滞在時の私の最終到達目標は以下の通りでした。というか、「以下の通りです」と言った方が良い部分もあります。現在も英語修行中ですので、これらがすべてクリアーできているわけではありません。

(1)様々なトピック(プライベートな話題、自分の専門分野、日本の文化・社会現象など)について、自分の言いたいことが、一通り表現できるようになること。その際、できるだけネイティブスピーカーのコロケーションとレトリックを取り入れるよう努力すること。

(2)大学や大学院のペーパーおよび学位論文に耐えうる英語表現能力(ライティング)を身に付けること。

(3)臨界期以降は不可能とされている、完全な英語の発音の取得を目指すこと。社会言語学的に望ましいとされているRP(容認発音)をお手本として、マスターすること。

(4)相手の英語の訛りを聴いて、どの国の出身か分かるようになること。イギリス人のアクセント聴いて、スコットランド、北アイルランド、イングランド、ウェールズのどこから来たか判断できるようになること。特にイングランド王国内の代表的なアクセント(Yorkshire Accent, Liverpool Accent, Cockney, Kentish Accent, Devonshire Accent などを認識できるようになること。アメリカ英語、オーストラリア英語、カナダ英語などの訛りを聞き分けられるようになること。

(5)読書やBBCの番組を利用して、イギリスの地理や社会、文化や歴史などに根付いた、様々な英語表現(固有名詞)にも習熟すること。

(6)日本語からの移転の影響で間違いやすい、または瞬間にアウトプットできない英語表現に習熟すること。例えば、「山菜」は、’mountain vegetables’ ではなく、説明調の’edible wild plants’ となる。その際、’edible’ と ‘eatable’の意味の違いなどの問題なども絡めて考える。

(7)英語のイディオムを覚えようとせず、馴染むようにすること。

(8)使用頻度が高くて、区別の紛らわしい英語の用例について、個人的に学習すること (e.g. ‘specially’ vs. ‘especially’; ‘classic’ vs. ‘classical’; ‘sensible’ vs. ‘sensitive’ vs. ‘sensuous’; ‘simple’ vs. ‘simplistic’  など)。

(9)英語の前置詞句表現に習熟することで、S+V構文で単調になりがちな自分のライティング・スタイルを豊かにする。学術論部を執筆する際に引き締まった英文が書けるようになること。例えば、’When we conducted the following research,…’ → ‘At the time of  our research, …’ など。

以上は、私の英語上達に関する個人的な関心に基づく英語学習プランです。大項目あり、小項目ありです。思いついたままに書き連ねてみました。

これらの項目は、生涯をかけて身に付けなくてはならないものも多く、まだまだ学習の旅は途中の段階です。イギリスで出会った先生方や恩師から受けた影響もかなりあるかもしれません。

次のポストでは、(1)~(9)を身に付けるために、私の実践して来たまたは実行している「修行方法」について書き連ねてみたいと思います。